2017年11月10日金曜日

そろそろ十一巻も出るので振り返りでも

みなさんこんにちは
虎走かけるです
Twitterでも呟きましたが、12月9日にゼロから始める魔法の書の十一巻が発売されます。
十巻の続きでもあり、短編集でもあり、過去短編の再録もあり。
そういう一冊になっております。
書き下ろし部分は実はさほど多くないのですが、私はこの短編集が大好きです。
十巻の時も似たような事を書きましたが、この短編集のために今までの巻があったのだとすら思います。
書き始めてからずっと、「本編が終わって、許されるならこういう短編集が書きたい」と言い続けていた代物です。
これが本当に世に出せて、私は幸せな作家です。

ところで私には、デビュー前から作品を読んでくれる友人がいました。
投稿を始める前から、私が趣味で書いた小説を読んで、
面白いと言ってくれる得難い友人でした。
人とのコミュニケーションが苦手で、友人も少ない私と、
ただ「作品」だけを介して繋がっていてくれた人でした。

その人は私のデビューが決まるとことさら喜んでくれて、
私が今、サインに使っている石のハンコを自分で彫ってプレゼントしてくれました。
カルチャースクールにかよい、先生に直してもらいながら作ったと言っていました。
「このハンコが壊れたら、また新しいの彫ってね」と約束していました。
私は新刊が出るたびに自著にサインをして、友人が掘ってくれたハンコを押して、発売前に友人に本を贈っていました。
「いつかゼロと傭兵が、平和になった村で幸せに暮らす話が書きたい」
 そう言うと、友人は
「そういうの絶対に読みたい。楽しみ過ぎる。ずっと待ってる」
 と言ってくれました。
 それが社交辞令ではなく、心からの言葉であると確信できる、数少ない「リアルの知人」というのがその友人でした。

十一巻を書いているとき、そして書き上げたとき、私は「きっと友人が喜んでくれるものが書けたぞ」と確信しました。
早く読んでもらいたくて、いまもうずうずしています。
去年の初めに入院し、そのままあっという間に他界してしまった友人ですが、
それでも私は「読んでもらいたい」と思いますし、「きっと喜んでくれる」と思ってしまうのです。
私は新刊をもって墓前に行くとか、そういう事をできる性格ではありません。
でも私がこうして書き続けている限り、きっと友人はどんな手を使ってでも私が書いたものを読んでくれるだろうと思います。

作家といういきものは、みんなある程度心のなかに「想定する読者」というものがあると思います。
私が初めて「顔のある読者」として想定できたのが、その友人でした。
そして友人は、不思議な事に、他界した今も私の中で第一の読者であり続けています。

十一巻を書き上げて、そして発売が発表されて、胸を張って言う事ができます。
遠野さん、あなたのおかげで完結できました。本当にありがとう。
十年以上も前からあなたが私の読者でいてくれたから、私は自信を失わず、心折れず、ついに作家になれました。本当にありがとう。

これからも友人と、そしてすべての読者のみなさんに恥ずかしくない、
「私は絶対にこれが面白いと思う」と胸を張れるお話を、
書き続けていきたいと思っています。
新シリーズがんばるぞー!